永遠という名の明日

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13年分の資料と書類の山。
それは私の机をうめつくし、一つの砦になっていた。
「懐かしいですね、これ。コイルさんのメモがまた」
「何年前のお菓子ですか」
「この写真! コイルさんの前髪短すぎです」
あなたは座っててくださいと椅子に縛られ
ゴーダは一つ一つ私の荷物を片付けた。
春の午後。
本の一冊一冊をふきんで拭きながらダンボールに詰め
ゴミ袋を6つ縛り上げ、作業は三時間かかった。
硬くしぼった雑巾でふき、13年間私が泣いて笑った場所は
ただの机になった。
この会社に就職した日のこと、机で泣いたこと、徹夜の時間。
私はぼんやりと思い出していた。
その瞬間、私の目の前を本の山が移動した。
「よいしょ」
ゴーダは自分の荷物を、私の机に運び始めた。
…ここ、アンタが使うの?
私は少し涙ぐんだ目を瞬きでごまかしながら言った。
「そうです」ゴーダは次から次へと荷物を運び
私が使っていたアーロンに座った。
「だからいつでも帰ってきてください。いつでも退きますから」
…そ。笑顔が作れたかわからないが口角をあげた。
バカねぇ。口の中だけで呟いた言葉に返事が返ってきた。
「バカですねえ」

居場所がなくなるような、気がしてた。
自分できめたことなのに、全てを失ったような気がしてた。
バカだな、私。本当にバカ。

お礼に奢った晩御飯。
「1日の恋人と、永遠の友人、どっちが良い?」そう聞いた。
ちいさくちぎったパンをもぐりと口に入れゴーダは言った。
「人によります」
まあ面白みのない答え。でもきっと真実。
私は今まで【男友達】という観念がなかった。
恋をするか、仕事仲間か。
でもゴーダははじめての、男友達だと思ってる。
彼がどう思ってるか、わからないけれど。
more...

また見ぬ自分

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一ヶ月ほど前に仕上げた仕事があった。
それは規模的にそれほど大きくなく
メインの仕事を抱えながら気分転換程度に仕上げたものだった。
言葉は悪いが、さらりと。
でも今日、Pから「別の人に改稿を依頼した」と聞いた。
改稿作業は、基本的に初稿をあげた人間がする作業。
Pは言った。

「ちょっとテイストが濃すぎて」

ええ?驚いた。
そりゃ、私が本気で作ったものは正直【濃い】。
でも今回出したものは、本当にライトなつもり…だった。
予想以上に私は私を理解していない。
でもふと思い出した。
先日、相方の実家に顔合わせに行った。私の両親と。
私は私の両親をすこぶる普通の人だと思っているのだが
相方の両親と比べると格段にキャラがたってる。
母親は日本舞踊を15年やっていて弟子と共に踊り狂ってるし
父親はお米に香りを付けられないか、とアホみたいに研究をしている。
普通だと思ってたけど、たぶん少しだけ普通じゃない。
相方の両親が物静だから、余計そう思ったのだろうか。
毎日その中にいると、何が普通で何が普通じゃないか分からなくなる。

物つくりで、普通の仕上がりってなに?と聞かれれば
「クライアントに求められた通りの仕上がりを返せる事」だと私は思ってる。
仕事としてクリエイションを続けるなら、ある程度それは必要。
でも、【個】がなくて「私」がつくる意味があるのか、と
やはり思っている。両方持っているのが良いけれど。
…というか私は両方持ってると思ってたのにな(笑)。
自分のことは自分で、まったく分かっていないものです。
まだまだだな、私。

雨の夜に

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今日は六ヶ月の妊婦検診だったので、ついでに自宅作業dayにしました。
自宅で仕事は進まない。もうマンガ読んだりネットしたり本読んだりニコ動みたり。
誰かが見張ってないと仕事できないなんて、なんてダメな30才。
あげく最近は終電人なので、会社に居ると終電までに!と頑張るけど
自宅だと「相方帰ってくるまで〜」とダラダラ仕事。
ダメすぐる…。あげくブログまで書いてる。えへへ。
だって今日、検診で赤タンに性別が分かったのです。

たぶん男の子だそうで。

超音波でブツ(笑)がなんとなく見えました。
いやー、嬉しいですね。実は私、めさめさ男の子が欲しくて。
女の子は同姓だけに気持ちが分かるし
精神的にも早くに大人になるので(まあそこが可愛いのですが)
男の子がいいなーと漠然と思っていました。
私、小さい男の子が着る野球のユニフォームとか…大好きなんですよね。
あげく何かしらの職人になってほしい!という希望があったので
細く長くコツコツと物を作る凝り性でマニアな優しい男の子にしたいです。
うふふ。意味わかんない。
私はたぶん、ちっこい相方を育てたいのだろう。
ちっこくて我が侭で、可愛い相方を。
だから本当に嬉しいのだけど、相方は「女の子がいい」と切望していたので
ションボリしていますが、私が喜んでればそのうち流されるでしょう(笑)。
というかションボリしてももう性別は変わらないし。
「女の子でしょう」と言われて男の子だった人は多いけどその逆は少ない。
もし産めたら、次は女の子が良いけどね。こればっかりは。

明日から相方の実家へ行きます。
実はうち、両家の顔合わせもしないままに結婚して家建てて妊娠したのです。
なんて好き放題な生き様(笑)。
だからまとめて報告&顔合わせです。
多少「色々遅いんじゃー」と怒られること、想定内です(悪)。
二階建ての新幹線、超楽しみ。

春の嵐



そろそろ更新しないと死んだと思われる!
お久しぶりです、コイルです。
外は大雨。黒いアスファルトに桜のピンクが鮮やか。
雨に濡れる桜は大好き。本当に美しい。

私のなかで景色は記憶に直結する。
数年前、大きな桜の木の横に住んでいた。
相方と二人暮らし。古い借家で春には満開の桜、土にはもぐら。
縁側から畑が見えて、ここは東京?ってくらいのんびりした場所だった。
桜を見ながら相方は言った。

「子供は…俺に似ちゃうとイヤだから…どうかな」

話の流れは覚えていないが、相方は自分が嫌いだ。
何がって自分の顔が嫌いらしい。
私から言わせてもらえば「アホか」と。
自分が愛せなくて誰が愛すの?
てか私がもう愛してるんだから私に失礼だと言ったら
「コイルが好きになってくれたから最近はちょっと好き…」
まあそのレベルで良いや。ぼんやり思っていた。
でも相方の自分嫌い病は結構根深く、そんな矢先妊娠がわかった。
前にも書いたが相方の反応は絶句。

実は私、相方に妊娠したことを言うのが怖かった。

ずっと「子供はな…」と言われていたから。
ある程度まで最悪の状態を想像していたが
普通に絶句し、普通に喜んだ。
まあ私が喜んでいるのだから、喜ぶだろう。
何度も言うが、相方は【コイル至上主義】だ。
子供、ちゃんと可愛がるかな?私はずっと心配だった。

でも先日。相方が私のお腹に手を乗せていたとき
偶然赤タンがモコリと動いた。
その動きはとても大きくて、私が今まで感じた胎動のなかでも
一番大きなもので。
掌をおいていた相方にもそれは伝わった。
「うごいた」
相方は、もう片方の手も私のお腹に乗せた。
待ってる姿に、20分に一回くらいしか動かないよと私は言った。
「ふーん」と言いながらお腹から離れず
それからは毎日帰ってきてはお腹に手を乗せてテレビを見ている。
ほんの少しの父性だと思う。それでも嬉しかった。
これから先は長くて、仕事が2500%大切なの相方は
子供と共存するのは難しいと私は思っている。
でもほんの少し一緒に未来を楽しめたらいい。
そう思う。

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