生きる道
どうして、人は恋に落ちずに居られない?
恋はこんなに面倒で、こんなにも苦しい。
「上司でいてほしい。でも、上司で居てほしくない」
A子は、上司のBさんが好きだ。もう、3年も。
A子は絵描きだが、天才的な絵を描く人間は
基本的に心が弱く、何度も鉛筆を置きかけた。
それをBさんは支え続けた。
「お前のかく絵が好きだから。お前の面倒は、俺が見る」
お前の面倒は、俺が見る。
この言葉を信じてA子は成長し、今度大規模な作品のメインを任された。
その翌月、Bさんは言った。
「会社を辞めることにした」
前から決めていたけど、親の仕事を手伝う事にした。
「A子も安定して、良かった」
BさんはA子の気持ちをしっている。
上司で居てほしい。でも上司で居てほしくない。
お前の面倒は、俺が見る。この言葉を、勝手に信じすぎていた。
そしてどこか、未来を信じていた。
なぜ恋にしてしまった。恋は面倒だ。なぜ恋なんだ。
深夜のデニーズでA子は泣いた。
最後に伝えたい。伝えないと後悔する。A子はコイルに言った。
あなたは客観視できるでしょう?それに私とBさんをよく知っている。
私は言った。
―――そのまま伝えるのがいい。
伝えられなかった想いだけが、人の心に残り続ける。
それは時を越え、歪む。美しくも、醜くも。
だからそのまま伝えるのがいい。Bさんはそれを試せる相手だと私は思う。
だってA子に3年も恋されて、それに上司で答えた男だ。
どうしたい?A子が望む終わりを、A子は選ぶことができる。
A子は泣きながら、延々と語った。
そして微笑んだ。
「私の仕事を、みててほしい」
これこそが。この強さこそがBさんが残したもの。
……じゃあ届くようにがんばろう?
実家はどっかの漁村らしいよ。劇場公開レベルじゃないと、届かないね。
「……劇場なんて、あるのかしら」A子が微笑んで、コイルも笑った。きっとあるよ。
今週、Bさんは旅立つ。
抗っても、人は恋に落ちる。
でも、これが私たちの生きる道。
朝の7時にA子と手を繋いで歩いた。




